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何故、デジタルマネーでの給与支払は法律的にアウトなのに〇〇PayはOKなのか?|#ペイロール

労働基準法で定められている通り、労働者への給与支払は通貨での直接支払いが原則(例外として、銀行等の金融機関の預貯金への振込みと、一定の要件を満たす証券口座への振込みも認められている)という厳しい制限が課せられています。

そんな中、デジタルマネーによる賃金支払い(資金移動業者を利用した給与支払い)が解禁されるという噂がまことしやかに囁かれています。

もし、それが実現すると事業者側の管理コストの削減や労働者側の利便性があるとして、それらを活かした新しい事業の創出が期待されています。

国がキャッシュレスを推進している今だからこそ好機として、業界関係者が働きかけているのは事実でしょうが、現在のところは禁止されているのが実情です。

おそらく、解禁を今か今かと待ちわびている資金移動業者も少なくないのではないでしょうか。

一方で、このような発表を耳にしたことはありませんか。

  • 【LINE Pay】企業から個人への送金を可能にする「LINE Pay かんたん送金サービス」を開始
  • 日本郵船が電子通貨プラットフォーム「MarCoPay」発表、船員給与の再現金化が可能に
  • 工事現場と職人をつなぐ「助太刀」、給料を即日チャージで使えるプリペイドカード発行

同業者からすると「何故、彼らは良いんだ!」といった声が聞こえてきそうであるが、ちゃんと法律遵守したサービスです。

当記事では、Fintech界隈の事業開発の方向けに、これらのサービスが何故、法律的にOKなのか考察してみます。

LINE Pay かんたん送金サービス

LINE Payかんたん送金サービスとは2019.7にLINE社から発表された新サービスです。

リリースタイトルをみると、一見、給与支払サービスだと勘違いされるかもしれませんが、そうではなく、あくまで以下の用途で使えるサービスだそうです。

上記リンク引用:本サービスは、企業立て替え金精算、経費・交通費精算、ECでの返品に伴う返金、クラウドソーシング報酬受け取り、リユース買取代金の受け取り、ポイント交換、キャンペーン懸賞金やキャッシュバックなどでご利用いただくことを想定しております。

そう、労働者への給与支払には使えないが、立て替え金の清算や、クラウドソーシング報酬のような業務委託料支払には使えるということです。

つまり、LINE Payかんたん送金サービスは労働基準法で言うところの「賃金の支払い」に該当しないのでOKということです。
因みに、類似サービスだと「業務用プリン」があります。

LINE Pay (LINE社員への手当支払い)

「じゃあ、これはどうなの?」と疑問に思った方は感度が高いです。そう、筆者も耳にしたことがありますが、LINE社員がLINE Payで報酬を貰っているというのです。

確かに転職サイトのLINE社求職情報を見てみると「職位によりLINE Payでの手当てがある」と記載があります。
これはどういうことかというと、おそらく給与の一部を現物支給で払っているということでしょう。

現物支給とはなんぞやという解説は、厚生労働省の賃金関係Q&Aが分かり易かったので、下記に引用します。

Q 勤務先の会社では、販売促進の意味で給料の一部が会社の製品の現物支給で支払われています。このようなことは法律で認められているのでしょうか?
A 労働基準法第24条では、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない、と規定されています。

従って、原則は現物支給は認められていませんが、労働協約等によって別段の定めがあれば現物支給が認められる場合もありますので、まずは会社や会社の労働組合等に労働協約の有無等を確認してください。
あらかじめ労働協約を結んでおけば、福利厚生や賞与の仕組みに組み込むアイデアは色々と実現できそうですね。

MarCoPay(マルコペイ)

MarCoPayは2019年07月25日に日本郵船が発表した新サービスです。

これは、れっきとした労働者への給与支払であるが、何故OKかというと、日本の労働基準法の及ばない場所(海外あるいは公海上)だからでしょう。

日本法人が日本国内でこのスキームで事業を行うは現状では不可ですが、海外に人材を持つ会社は色々と模索しがいがありそうです。

助太刀Pay(スケダチペイ)

サンドウィッチマンがCMに起用された建設現場と職人をつなぐマッチングアプリ「助太刀」をご存知でしょうか。

その助太刀が提供する助太刀Payは、建設現場での仕事を完了したユーザーが日払いの収入を即時に受け取り、ATM出金や店舗決済が可能になるサービスです。

何故、このサービスが法的にOKかというと労働者に対する給与支払ではなく、業務委託契約を交わした個人事業主に対する報酬の支払いだからでしょう。

工事現場と職人をつなぐマッチングアプリとして生まれた助太刀ですが、悩みの種であろう現場での金銭のやり取りをスムーズにし、そのデータや評価システムを活かした保険サービスを提供するなど、業界特化型のプラットフォーマーとして成長が著しく、大変勉強になります。

Cyurica(キュリカ)

キュリカとは人材サービス会社のヒューマントラストが提供する給与の前払いサービスです。

ここで、CYURICAカード会員規約を引用します。

1.CYURICAサービスにおけるCYURICA利用とは給料の一部利用であること。
3.給料は、月1回私の指定する銀行口座に振り込まれるものでありCYURICAサービスを利用しない場合には当該銀行からの引出し手数料以外の負担はないこと。また、CYURICAサービスは、あくまでも私の必要に応じて私の選択で利用する給料相当額の一部利用で、利用する度にCYURICAサービス利用料を自己負担するサービスであること。

あくまで給与の一部を前払いにて引き出す為に資金移動業者を利用しているということでしょう。
あとは、銀行ATMで現金のみで受け取ることができることもポイント。そして、なぜ全額利用することができないのかは、労働法が関係するということですね。

最後に

Fintechの分野の中でもデジタルマネーへの給与支払 (ペイロール)は、未解禁のホットな題材として注目されています。

確かに解禁されると、面白いアイデアを実現できる可能性が広がりますが、実はそれを待たずとも、内容次第では近しいアイデアをカタチにできますよね。

この記事をご覧いただいた方の中で「うちもできそうかも!」とピンときた方は、是非チャレンジしてみて下さい。